新古今和歌集 巻第十三 恋歌三 1201
題知らず
八条院高倉
いかが吹く身にしむ
色の変るかな
頼むる暮の
松風の声

新編日本古典文学全集「新古今和歌集」(訳者 峯村文人 小学館)の訳
題知らず
八条院高倉
どのように吹くのか。
身にしみる様子が変わっていることよ。
人が、逢おうと約束して、
あてにさせている夕暮の松風の声は。
意訳
題詞 題は付けずにおきます。
作者 八条院高倉
いかなる風が吹けば、常磐にして色の移ろはぬ松の緑を、
変え得るのでございましょうか。
=
その方に、いかなる言の葉をかけ、また、いかに時を共にすれば、その方が我に深く心を寄せるような、姿やたたずまいを身にそなえ、魅惑的な女(ひと)へと変わり得るのでございましょうか。
その方の来し方を待ち望みつつ佇む夕まぐれ。
常磐の松に
風渡る音の聞こゆるばかりにて。
=
なほも我に靡き給はぬその方に、いかに心寄せ申し上ぐべきか、と思ひ惑ふのでございます。
解説
八条院高倉(やじょういん・たかくら、?–1248年以後1251年以前)
生年は治承元年(1176)頃、没年は寛元二年(1244)以後、建長三年(1251)以前と推定されます。新三十六歌仙、また女房三十六歌仙の一人に数えられます。
その出自については諸説ありますが、兄海恵と同じく、二条天皇の中宮であった高松院(姝子内親王)に、澄憲が密かに通い生まれた子と伝えられます。高松院が治承元年に急逝したことは、高倉誕生と相前後しており、因果関係をめぐる推測もなされております。
幼少より藤原俊成に預けられるかたちで、八条院(高松院の姉、暲子内親王)に出仕し、後鳥羽院歌壇にて才を振るいました。建暦元年(1211)、八条院の薨去にともない出家したと伝えられます。
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