2025-03-01から1ヶ月間の記事一覧
閑夜冬月 霜冴ゆる庭の 木の葉を踏み分けて 月は見るやと 訪う人もがな 西行 (山家集 521) 意訳 霜が降りて厳しく冷えわたる庭の木の葉を踏みしめつつ、月を眺めているのでしょうかと、訪ね問いかけてくれる方がいればよいのにと思います。 解説 霜さゆる 霜…
『源氏物語』における作中歌の役割と表現技法 『ウィキペディア(Wikipedia)』参考 『源氏物語』は、平安時代中期に成立した王朝物語の中でも、特に優れた文学作品として後世に大きな影響を与えた。その物語を構成する要素の一つとして、作中に詠まれる和歌…
からごろもうつこゑ きけば月きよみ まだねぬ人を さらにしるかな 紀貫之 (和漢朗詠集 351 秋 擣衣) 歌詠 多岐都 【新編日本古典文学全集「和漢朗詠集」(訳者・菅野禮行・小学館)の訳】 衣を擣つ砧の音がする。 それを耳にしていると、 月が明るいのでまだ寝…
桜に映る日本の美意識——『もののあはれ』と文化の継承 春の訪れとともに、日本各地で桜がほころび始めます。そして毎年、多くの人々が桜の名所に集い、満開の桜を愛でる「花見」の季節を迎えます。 けれども、なぜ、日本人の心はこれほどまでに桜に惹かれる…
更級日記 Sarashina Nikki From Wikipedia, the Free Encyclopedia – 多紀理’s Edited and Proofread Version The Sarashina Diary (更級日記, Sarashina Nikki) is a memoir written by the daughter of Sugawara no Takasue, a lady-in-waiting of Heian-p…
蜻蛉日記 Kagerō Nikki (The Gossamer Years) Source: Wikipedia, the Free Encyclopedia 多紀理's Revised and Polished Translation Kagerō Nikki (蜓螂日記, The Mayfly Diary, commonly referred to as The Gossamer Years) is a seminal work of classi…
『和泉式部日記』 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』多紀理推敲校正版 『和泉式部日記』(いずみしきぶにっき)は、和泉式部によって著された日記であり、女流日記文学の代表的な作品である。「三条西家本」を底本とすることが多い。 概…
Man'yōshū From Wikipedia, the free encyclopedia 多紀理's proofreading version. Refined English Edition The Man'yōshū (万葉集, pronounced [maɰ̃joꜜːɕɯː]; literally "Collection of Ten Thousand Leaves") is the oldest extant collection of Japan…
紫式部集の文学的特質と伊勢物語の影響 宗像多紀理 はじめに 『紫式部集』は、『紫式部日記』と異なり、私的な回顧録としての性質を持つ和歌集である。『紫式部日記』が公的な記録であるのに対し、本歌集は個人の心情が詠み込まれたものであり、その詞書の簡…
『源氏物語』に映る紫式部の思索――雅と現実の交錯 宗像多紀理 『源氏物語』は、平安中期に紫式部が著した長編物語であり、日本文学の金字塔として輝きを放つ。本作が成立した時代、貴族社会では和歌や漢詩が教養の一環として重視され、文芸は宮廷文化を形成…
梅花の歌 万葉集の梅といえば、「令和」の典拠、梅花の歌の序文にあります。 『初春令月、気淑風和、梅披鏡前粉、蘭薫珮後之香 初春の令月にして、気淑く風和らぎ、 梅は鏡前の粉を披き、 蘭は珮後の香を薫らす。 「梅花歌三十二首并序」〈「万葉集」より〉…
大納言成通、文遣はしけれど、 つれなかりける女を、 後の世まで恨み残るべきよし申しければ たまづさの通ふ ばかりになぐさめて 後の世までの 恨み残すな 詠人不知 (新古今和歌集 巻第十二 恋歌二 1103) 意訳 題詞 藤原成通が恋文を贈ったものの、そっけな…
時空を超える歌声―『萬葉集』翻刻と英訳の狭間で― 宗像多紀理 序章:いにしえの歌に魅せられて 春の霞がたなびき、鶯のさえずりが聞こえる頃となった。さて、今回筆を執ったのは、いにしえの歌集『萬葉集』についてである。遥か昔、人々の心が織りなす歌は、…
「後深草院二条の和歌と自己表現——『とはずがたり』にみる女性の生き方」 宗像多紀理 『とはずがたり』は、後深草院二条によって記された自伝的物語であり、鎌倉時代の宮廷文化や女性の生き方を知る上で極めて貴重な資料である。本作は、単なる個人の回想録…
『枕草子』に見る清少納言のまなざし 平安時代の才媛・清少納言が著した『枕草子』は、日本三大随筆のひとつに数えられ、千年を超えて今なお多くの人々に親しまれています。本作には、宮廷生活の華やかさや四季の移ろいが優雅に描かれる一方で、率直な人物評…
神社信仰とユダヤ文化の交差、並びにカタカムナの謎 宗像多紀理 はじめに 日本の神社信仰とユダヤ文化との間に見られる類似性は、長年にわたり一部の研究者や思想家によって指摘されてきた。また、古代日本の智慧を象徴する「カタカムナ」との関連についても…
紀の国の由良の 湊に拾ふてふ たまさかにだに 逢ひ見てしがな 権中納言長方 (新古今和歌集 巻第十一 恋歌一 1075) (百人秀歌 90) 「題しらず」 家集に、 第二句「由良の岬に」。 結句「あふよしもがな」。 口語訳【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」(訳…
古事記における暗号の本質——古代日本の記録に秘められた知恵 宗像多紀理 『古事記』は、日本最古の歴史書であり、単なる神話や伝承の集積にとどまらず、極めて高度な暗号的要素を含む書物としての側面を有している。そこには、歴史的事実を伝えるための象徴…
文化の創造的継承と時代の精神──ホセ・オルテガ・イ・ガセットの思想 宗像多紀理 はじめに ホセ・オルテガ・イ・ガセット(José Ortega y Gasset, 1883-1955)は、二十世紀スペインを代表する哲学者であり、その思想はヨーロッパ全域に深甚な影響を及ぼした…
題知らず 別れてののちも 逢ひ見んと思へども これをいづれの 時とかは知る 大江千里 (新古今和歌集 巻第九 離別歌 870) 【新編日本古典文学全集「新古今和歌集」(訳者・峯村文人・小学館)の訳】 題知らず 大江千里 別れてからのちも、 また逢おうと思うけれ…
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』多紀理、推敲校正版 ホセ・オルテガ・イ・ガセット(José Ortega y Gasset, 1883年5月9日 - 1955年10月18日)は、スペインの哲学者である。主な著作に『ドン・キホーテをめぐる思索』(Meditaciones del…
文学に映る精神の交響——三島由紀夫と夏目漱石の共鳴 宗像多紀理 はじめに 三島由紀夫と夏目漱石——日本近代文学に燦然と輝く二つの巨星は、時代も作風も異にしながら、共に人間の内面に巣くう孤独や葛藤を見つめ続けた作家である。三島の『金閣寺』と漱石の『…
旅宿時雨といふことをよめる いほりさす楢の木 かげにもる月の 曇りとみれば 時雨ふるなり 瞻西法師 (詞花和歌集 150) 【通釈】 楢の木陰に設えた仮の庵に差し込む月の光――ふと曇ったかと思えば、時雨の気配が漂う。 【補記】 「庵(いほり)さす」とは、仮…
ドストエフスキーの人間観—矛盾・道徳・救済の交錯する世界 宗像多紀理 フョードル・ドストエフスキー(1821-1881)は、人間の心理の深奥に迫る文学を遺した作家であり、その作品群は近代文学における金字塔として高く評価されている。特に『地下室の手記』…
Who Had the Most Beautiful Hair in the Heian Period? What Truly Captivates People? Why Were Young Girls Called "Mezashi"? When Japanese people hear the word mezashi, almost all of them immediately think of dried sardines sold in supermarke…
あらち山雪降り 積もる高嶺より 覚めても出づる 夜半の月かな 源雅光 (金葉和歌集 685) 金葉和歌集/川村晃生/柏木由夫/伊倉史人【3000円以上送料無料】価格: 1430 円楽天で詳細を見る 新 日本古典文学大系9 金葉和歌集 詞花和歌集 岩波オンデマンドブック…
米国における和歌の位置付け—小野小町・和泉式部・紫式部・清少納言— 多紀理 和歌は日本の伝統的な詩歌の形式であり、千年以上の歴史を有する文化遺産です。特に、小野小町・和泉式部・紫式部・清少納言といった女性たちは、和歌を通じて自身の感情や思想を…
東風吹かば匂ひ おこせよ梅の花 あるじなしとて 春を忘るな 菅原道真 (拾遺和歌集 雑春 1006) 東風吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春な忘れそ (大鏡) 菅原道真と飛梅伝説 「飛梅伝説」とは、「梅の木が都より飛来し、その地に根づいた」とする物語で…
三月一日たらてくれにけるによみける 逝く春を留めかねぬるる夕暮れは曙よりもあはれなりけり ゆく春を留めかねぬる夕暮れは曙《あけぼの》よりもあはれなりけり (173) 行く春を 留めかねぬる 夕暮れは 曙よりも あはれなりけり 山家集・上 春 西行 「西行…
和歌における色彩とオノマトペ——日本人の感性が捉える視覚と聴覚の特異性 宗像多紀理 1. はじめに 和歌は、日本文化における詩歌の精華であり、古来より四季の移ろいや心情の機微を詠み継がれてきた。その表現には、色彩と言葉の響きが巧みに織り込まれ、聴…