2025-06-01から1ヶ月間の記事一覧
末摘花(すゑつむはな) 「巻名について」「末摘花」とは、紅花の別名にて、その花弁から紅がつくられます。この巻の題は、次の光源氏の御歌に由来いたします。 なつかしき色ともなしに何にこのすゑつむ花を袖にふれけむ(光源氏) 本文 思へどもなほ飽かざ…
末摘花(十四首) 『もろともに 大内山は 出でつれど 入る方見せぬ いさよひの月』 頭中将 ⇒ 光源氏(贈歌) ご一緒に内裏をお出になりましたのに、行き先をお明かしにならぬ十六夜の月のようでございます。 ※「大内山」は内裏を指す。「月」は光源氏のこと…
忠義の象徴としての楠木正成―『太平記』の語りと神域における顕彰 多紀理 第一章 はじめに 中世日本における政治的混乱の只中で、楠木正成(くすのき まさしげ)は南朝の忠臣としてその名を高め、後世に至るまで「大忠の士」として称えられてまいりました。…
和歌部類再編の試みと室町後期の古典観 ― 三條西実隆『一葉抄』の翻刻とその意義 ― 多紀理 【第一章 はじめに:本稿の目的と問題意識】 和歌の受容と変容は、日本文学の長い歴史において連綿と受け継がれてきた主題である。なかでも、『萬葉集』という古代歌…
新古今和歌集 巻第十三 恋歌三 1183 「前栽の露置きたるを、などか見ずなりにし」と申しける女に 実方朝臣 おきて見ば袖のみ 濡れていとどしく 草葉の玉の 数やまさらん 新編日本古典文学全集「新古今和歌集」(訳者 峯村文人 小学館)の訳 「庭の植え込みの朝…
若紫(わかむらさき) 「巻名」 手に摘みていつしかも見む紫の 根にかよひける野辺の若草 (光源氏) この巻名は、上記の和歌に因むものでございます。 本文 虐病にわづらひ給ひて、よろづにまじなひ加持などまゐらせ給へど、しるしなくて、あまたたびおこり…
若紫(二十五首) 多紀理意訳 『生ひ立たむ ありかも知らぬ 若草を おくらす露ぞ 消えむそらなき』尼君 → 女房(贈歌) この先いかなる道をたどり、どこで育ってゆくのかも見当のつかぬ、か弱き若草のようなあの子を残して―― 露のように儚い身の私は、それを…
tagiri.hatenablog.com tagiri.hatenablog.com 【題詞について】 1511崗本天皇御製歌一首 『日本書紀』巻第二十三 舒明天皇二年十月条 冬十月壬辰朔癸卯。天皇遷於飛鳥岡傍是謂岡本宮。 ・新編全集頭注(③四一頁) この岡(飛鳥岡)と岡本宮の所在地について…
新古今和歌集 巻第十三 恋歌三 1182 題知らず 藤原惟成 しばし待てまだ夜は 深し長月の 有明の月は 人まどふなり 歌詠 多岐都 新編日本古典文学全集「新古今和歌集」(訳者 峯村文人 小学館)の訳 題知らず 藤原惟成 起きて帰るのをしばらくお待ちなさい。 ま…
古今和歌集 巻第一 春歌上 35 詠人不知 梅の花立ち寄る ばかりありしより 人のとがむる 香にぞしみける 日本古典文学全集(小学館)の訳 読人しらず 梅の木の傍らに、ちょっと立ち寄るだけのことをしたところが、たちまちその香にしみてしまって、誰かの移り…
tagiri.hatenablog.com 【部立について】 巻一、巻二が三大部立の雑歌・相聞・挽歌となっている。 巻九も雑歌(1664~)・相聞(1766~)・挽歌(1795~)の三大部立で構成されている。 巻一の雑歌巻頭は雄略天皇の歌であり、2番歌は舒明天皇の歌。 巻九の雑歌…
山家集 302番歌 西行法師 人々秋歌十首 鹿の音を垣根に こめて聞くのみか 月も澄みけり 秋の山里 意訳 垣根越しに鹿の声が間近に響き、澄みわたる月もはっきりと眺められる――この秋、山里に住まうわたくしの草庵にてございます。 302番の歌で思い出される歌 …
Exquisite Japanese Egg Sandwiches in the Land of Iconic TheatresSubtitle: Ginza and Nihonbashi Edition The beloved tamago sando — the Japanese egg salad sandwich — ...may seem humble at first glance. But behind that soft bread and creamy f…
夕顔(ゆうがお) 「巻名」 巻の名は、次のような御歌のやりとりにちなんでおります。 心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたる夕顔の花(夕顔) 寄りてこそそれかとも見めたそかれにほのぼの見つる花の夕顔(光源氏) これらは、光源氏と夕顔とがやりとりなさ…
夕顔(十九首) 多紀理意訳 『白露も 時雨もいたく もる山は さこそあやなく 見えまどひけめ』 ―― 白露や時雨の絶え間なく降る山の景色は、どれほど不確かに、あやふく見えたことでございましょう。 *光源氏が、夕顔の君の御簾越しに姿を見とがめ、あやしみつ…
基本的な演習発表の手順 異同の確認 校本と影印・写本を確認する。 諸注整理 可能な限りすべての注釈書を収集し、諸説を整理する。 基礎資料の確認。 考察 思いついた疑問について、さらに調べて深める。 【当該歌】萬葉集 巻第九 1664番歌 雜歌 泊瀬朝倉宮…
着物のたしなみと祖母の心——茶道を通して学んだ美しきこころ 私が初めて着物に親しんだのは、まだ幼い頃でございました。と申しますのも、小学生のときより茶道を習い始めた私は、その稽古の折に、祖母が着物を整えてくれた記憶がございます。祖母はいつも笑…
Japaaan magazin様より転載、多紀理推敲校正 遊女の原像をたどる――『万葉集』に息づく「遊行女婦」の面影 「『遊女=身体を売る女性』ではなかった――」。 このような認識の変化が、近年、古代日本の文献や研究の中から静かに浮かび上がってまいりました。 そ…
沖津島和歌集 34 多紀理 よもすがら影 うつさぬは月の瀬に 心のかぎを ひとり閉ぢけり 沖津島和歌集 35 多紀理 なゐふるもわがみ しづめて凛と立つ 言の刃も 風に溶けゆく 沖津島和歌集 36 多紀理 千重の闇問ふこと なかれかくれ世に 火のほむらさへ みづか…
日本語における語順の思想構造――「結論を最後にする」言語形式とウィトゲンシュタインの言語観 宗像多紀理 一、はじめに 日本語の語順には、他の言語に見られない特異な構造がある。その最たる例が、「結論を最後にする」という表現形式である。たとえば、「…
小野小町・衣通姫・常盤御前・静御前:古代日本の女性像とその連環の探求 多紀理 序論 日本の歴史において、女性の麗しさは、和歌や物語、軍記物にみやびやかに描かれ、世々の語りにそっと響き合う。小野小町、衣通姫、常盤御前、静御前は、いずれもその名が…
古今和歌集 巻第一 春歌上 68 亭子院歌合のときよめる 伊勢 見る人もなき 山里の桜花 ほかの散りなむ のちぞ咲かまし 日本古典文学全集(小学館)の訳 亭子院歌合のときに詠んだ歌 伊勢 こんな寂しいところに咲いて、誰も見てくれ手がない山里の桜花よ。 い…
新古今和歌集 巻第十二 恋歌二 1148 題知らず 西行法師 思ひ知る人あり あけの世なりせば つきせず身をば 恨みざらまし 新編日本古典文学全集「新古今和歌集」(訳者・峯村文人・小学館)の訳 題知らず 西行法師 私の心が分かってくれる人のある世で、この有明…
空蝉(うつせみ) 「巻名」 『空蝉』とは、蝉、あるいはその抜け殻を意味いたします。この巻の名は、以下の贈答歌に由来しております。 『空蝉の身をかへてける木のもとになほ人がらのなつかしきかな』(光源氏) 『空蝉の羽におく露の木がくれてしのびしのび…
空蝉(二首) 空蝉の 身をかへてける 木のもとに なほ人がらの なつかしきかな 光源氏 ⇒ 空蝉(贈歌) 意訳 蝉がその身を脱ぎ捨てるように、衣を残して姿を消されたあなたではございますが、それでもなお、あなたのお人柄がしみじみと恋しく思われます。 ※「…
源氏物語 帚木巻(全十四首) 手を折りて あひ見しことを 数ふれば これひとつやは 君が憂きふし 左馬頭 ⇒ 女<恋人>(贈歌) 【意訳】 あなたと連れ添いし日々を指折り数えてみますと、まこと、これひとつだけがあなたのおつらさであったはずもなく。 ※「…
“Meiji Japan, through photographs from 120 years ago: Scenery of Tokyo, Kyoto, and Osaka [Daredemo Museum Series]” “If so many foreigners are visiting Japan, wouldn’t a photo book highlighting the country’s tourist destinations sell quite …
アメリカ合衆国における日本文化の受容と展開: イェール大学、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校、ウェスタンミシガン大学、カリフォルニア大学サンタバーバラ校、カリフォルニア大学バークレー校における茶道、書道、『源氏物語』研究を中心に 多紀理 …
源氏物語 帚木巻(全十四首) (10) ある時は 人をうとみて 見ましかば 心やすくも 思ひけらしな この歌は、人に情を寄せずに過ごしていれば、心乱れることもなかったであろうに――という思いを、深い悔いと共に詠んだものです。 「ある時は」と過去を悔いる…
帚木(ははきぎ) 巻名 『帚木』とは、遠目には姿が見えるものの、近づくとたちまち見えなくなってしまう──かつて信濃の国にあったと伝えられる不思議な木の名でございます。そして巻名は、光源氏と空蝉との贈答の歌に由来いたします。 帚木の心をしらでその原…