雲心月性...

慈愛する和歌を拙筆くずし字で紹介致します。

2025-10-01から1ヶ月間の記事一覧

源氏物語 各巻冒頭文 篝火

巻名 篝火 近江の君の悪評が世に高まるにつれ、源氏の君も、さすがに内大臣の御身をお気の毒にお思いになりました。 玉鬘もまた、そのことをお聞きになり、ようやく御心を和ませて、親しみをお感じになるようになられました。 やがて秋風のそよぐ頃となりま…

源氏物語 篝火 二首

篝火 二首 篝火に たちそふ恋の 煙こそ 世には絶えせぬ 炎なりけれ 光源氏 ⇒ 玉鬘(贈歌) 【意訳】 篝火に寄り添うように立ちのぼる恋の煙こそ、この世にあって決して絶えることのない、わが思いの炎にございます。 ※「恋」という語は、古来より「火」を思…

孤独の花に思ふ 沖津島日記 11

沖津島日記 11 多紀理 孤独の花に思ふ 二月ばかりの頃、日々古の書物や和歌、論文などに格闘いたしつる中に、ふと、心の奥にて疑ひ起こりぬ。――我が孤独なること、いかにぞや、と。 世の人々は、結婚を思ひ、婚約の指輪や新居の白き帳面の映ゆる画像を見せつ…

古今和歌集  巻第十五 恋歌五 797

古今和歌集 巻第十五 恋歌五 797 題しらず 小野小町 色見えでうつろふ ものは世の中の 人の心の 花にぞ有りける 古今和歌集(片桐洋一著、笠間文庫)の訳 色にも現れないままに、衰え変じてゆくものは、何の花かと言えば、この世の中の殿方の心の花でありま…

百人一首  62番歌 後拾遺和歌集  巻第十六  雑二  939 清少納言

百人一首 62番歌 後拾遺和歌集 巻第十六 雑二 939 清少納言 夜をこめて鳥の そら音ははかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ 清少納言『百人一首画帖』より(提供:嵯峨嵐山文華館) 出典 『後拾遺集』巻題十六 雑ニ 939 「大納言行成物語などし侍けるに内の御…

枕草子「うつくしきもの」 151段

原文 151段 (全146段)(能155段) うつくしきもの。 瓜に書きたる児の顏。雀の子の、鼠なきするに、をどりくる。 二つ三つばかりなる児の、急ぎて這ひくる道に、いと小さき塵のありけるを目ざとに見つけて、いとをかしげなる指にとらへて、大人などに見せ…

枕草子に咲く桜 ― 清少納言の花ごころをたずねて ―

枕草子に咲く桜 ― 清少納言の花ごころをたずねて ― みずからお題を立て、すぐにお好みを言い切っておられます。 一見、思いつくままに書き連ねていらっしゃるようでありながら、取り合わせの妙に満ちた随筆集でございます。 その『枕草子』(著:清少納言)…

源氏物語 各巻冒頭文 常夏

巻名 常夏 あまりに暑うございますゆえ、源氏は夕霧殿と東釣殿にて涼を取っておられました。 そこへ、内大臣家の青年たちが夕霧殿をお尋ねになっておいでになりました。源氏は、最近内大臣が探し出された女の子(近江の君)のことを話題とされ、内大臣をやや…

源氏物語 常夏 四首

常夏 四首 撫子の とこなつかしき 色を見ば もとの垣根を 人や尋ねむ 光源氏 ⇒ 玉鬘(贈歌) 【意訳】 撫子の花のごとく、常に心惹かれる美しさを持つあなたを拝見いたしますと、母君のことを内大臣にお尋ね遊ばされることと存じます。 ※ここにおいて「とこ…

紫式部集 48

紫式部集 48 紫式部 世のはかなきことを嘆くころ、 陸奥に名ある所どころ描いたるを見て、 塩釜、 見し人の煙と なりし夕べより 名ぞ睦ましき 塩釜の浦 評釈 『新古今和歌集』¹、『時代不同歌合』²、『歌枕名寄』³に収められておりますこの歌は、必ずしも秀…

新古今和歌集 巻第十四 恋歌四 1268

新古今和歌集 巻第十四 恋歌四 1268 題知らず 西行法師 くまもなき折しも 人を思ひ出でて 心と月を やつしつるかな 新編日本古典文学全集「新古今和歌集」(訳者 峯村文人 小学館)の訳 題知らず 西行法師 すこしの曇りもなく、明るく照っているちょうどその時…

源氏物語 各巻冒頭文 螢

巻名 螢 この巻名は、光源氏が螢を放ち、その光に照らされた玉鬘のお姿を、螢兵部卿宮にお見せになったことに由来いたします。 本文 今はかく重々しきほどに、よろづのどやかに思ししづめたる御ありさまなれば、頼みきこえさせたまへる人びと、さまざまにつ…

源氏物語 螢 八首

螢 八首 鳴く声も 聞こえぬ虫の 思ひだに 人の消つには 消ゆるものかは 蛍兵部卿宮 ⇒ 玉鬘(贈歌) 【意訳】 声さえ立てぬ蛍の火のようなわたくしの恋心は、人の思ひのままに消えうせるような浅いものでございましょうか。 ※蛍の光に照らされて、玉鬘の御姿…

ことのはに宿る祈り

ことのはに宿る祈り 十月の連休には、飛騨の山あいにございますダムや温泉宿に籠もり、静かに心を鎮めておりました。 車を走らせながら、風の切り裂く音をひとつの調べとして耳にしておりましたところ、ふと―― 「そういえば、和歌はしばしば神社に奉納される…

新古今和歌集 巻第六 冬歌 631

新古今和歌集 巻第六 冬歌 631 題知らず 皇太后宮大夫俊成 かつ凍りかつは 砕くる山川の 岩間にむせぶ 暁の声 歌詠 多岐都 新編日本古典文学全集「新古今和歌集」(訳者 峯村文人 小学館)の訳 題知らず 皇太后宮大夫俊成 一方では凍り、一方では砕けて流れる…

瀬織津姫考 ―水と祓いの女神にみる清浄と再生の神観―

瀬織津姫考 ―水と祓いの女神にみる清浄と再生の神観― 多紀理 一 はじめに 瀬織津姫(せおりつひめ)という名を耳にされた方は少なくございませんが、その実像を知る人は極めて限られております。古事記や日本書紀にはその御名が記されておらず、正史の上では…

天照大御神─性別の揺らぎと神格変遷の考察

天照大御神─性別の揺らぎと神格変遷の考察 多紀理 1 はじめに 太陽を司り、また皇室の祖神と称される天照大御神(アマテラスオオミカミ)は、古代以来日本神話の中心的存在でございますが、その性別表現は一義に定まらないものとされております。たとえば、…

山家集 304

山家集 304 西行法師 はつかなる庭の小草の 白露を求めて宿る 秋の夜の月 新渡戸稲造(にとべいなぞう) (1862年~1933年) 思想家・教育者。札幌農学校卒業後、米・独に留学。京大教授・一高校長・東大教授・東京女子大学初代学長を歴任。また、国際連盟事務局…

籠目と暗峻の語:『かごめかごめ』における暗号的寓意読みと神社・記憶文化との接点

籠目と暗峻の語:『かごめかごめ』における暗号的寓意読みと神社・記憶文化との接点 多紀理 序論 日本のわらべうた『かごめかごめ』は、短い詞の中に多様な謎と意味の余白を宿し、長らく学者や愛好者の注目を集めてまいりました。本稿では、同歌を「暗号(ci…

萬葉集  巻第九  1704-1705

萬葉集 巻第九 1704 高橋虫麻呂 春の日の 霞める時に 住吉の 岸に出で居て 釣舟の とをらふ見れば いにしへの ことぞ思ほゆる 水江の 浦島の子が 鰹釣り 鯛釣りほこり 七日まで 家にも来ずて 海境を 過ぎて漕ぎ行くに 海神の 神の娘子に たまさかに い漕ぎ向…

百人一首  35 古今和歌集 巻第一 春上 42

百人一首 35 古今和歌集 巻第一 春上 42 紀貫之 初瀬に詣づるごとに、宿りける人の家に、久しく宿らで、 程経てのちに至れりければ、かの家のあるじ、かく定かになむ 宿りはあると、言ひ出して侍りければ、そこに立てりける むめの花を折りてよめる。 人はい…

源氏物語 各巻冒頭文 胡蝶

巻名 胡蝶(こてふ) 紫の上と秋好中宮との御贈答の御歌、「花ぞののこてふをさへや下草に秋まつむしはうとく見るらむ」、「こてふにもさそはれなまし心ありて八重山吹をへだてざりせば」によって名づけられております。 本文 弥生の二十日あまりのころほひ…

源氏物語 胡蝶 十四首

胡蝶 十四首 風吹けば 波の花さへ 色見えて こや名に立てる 山吹の崎 女房(唱和歌) 【意訳】風が立つと、波の花までもその色を映し出して見ゆるようでございます。こここそ名にし負ふ山吹の崎でございましょうか。 ※「山吹の崎」は近江国の歌枕。春の町の…

和文の揺籃と歌学の規範──紀貫之の文学的位相

お互い読者になっている凛太郎様のことばを旅するに触発され、少し紀貫之に関して思索をめぐらせてみました。本稿では、平安時代前期の歌人にして和文表現の先駆者たる紀貫之の文学的位相を、歌学・作歌・散文の三つの軸から丁寧に考察いたします。特に、仮…