雲心月性...

慈愛する和歌を拙筆くずし字で紹介致します。

2025-09-01から1ヶ月間の記事一覧

源氏物語 各巻冒頭文 初音

初音(はつね) 巻名 明石の君が姫君に贈られた御歌「年月を松にひかれて経る人にけふ鶯の初音きかせよ」に拠っております。 本文 年立ちかへる朝の空のけしき、名残なく曇らぬうららかげさには、数ならぬ垣根のうちだに、雪間の草若やかに色づきはじめ、い…

源氏物語 初音 六首

初音 六首 薄氷 解けぬる池の 鏡には 世に曇りなき 影ぞ並べる 光源氏 ⇒ 紫の上(贈歌) 【意訳】 薄氷の解けた池の澄みきった鏡のごとき水面には、世にも稀なる美しき二人の姿が並び映っております。 ※「鏡」の語は「鏡餅」をも想起させます。当時は鏡餅を…

二条の生き様と『とはずがたり』──時代と国境を超えた宮廷日記の必然

二条の生き様と『とはずがたり』──時代と国境を超えた宮廷日記の必然 何百年もの歳月を生き抜き、なお現代に伝わる「古典」と呼ばれる作品は、まことに抜群の存在感を放っているように感じられます。それも無理もございません。数多の手に渡り、現代まで届け…

源氏物語 各巻冒頭文 玉鬘

玉鬘(たまかづら) 巻名 光源氏の歌「恋ひわたる身はそれなれど、玉かづらいかなるすぢを尋ね来つらむ」に由来いたします。 本文 年月隔たりぬれど、飽かざりし夕顔を、つゆ忘れ給はず。心々なる人の有様どもを見給ひ重ぬるにつけても、「あらましかば」と…

源氏物語 玉鬘 十四首

玉鬘 (たまかづら) 十四首 舟人も たれを恋ふとか 大島の うらがなしげに 声の聞こゆる 乳母の娘(姉)(唱和歌) 【意訳】 舟人はいったい誰を恋い慕っているのでございましょうか。大島の浦辺に、もの悲しい声が響いてまいります。 ※都より筑紫へ下向す…

告白

告白 この世において、私が最も大切に思い、そしていつかは言葉として顕すべく温めてきたものを、今ここに記させていただきます。私にとって、この告白はただの自己開示ではなく、「丁寧に生きる」という理念を胸に刻んだ歩みの証でもございます。 わたくし…

神祇と陰陽 ― 日本古代神社制度と陰陽道の交錯

神祇と陰陽 ― 日本古代神社制度と陰陽道の交錯 多紀理 序論 わたくしたちの国の宗教的伝統は、八百万の神々を敬い、森羅万象に神霊を見出すところに始まります。その萌芽は縄文時代の精霊信仰にさかのぼり、弥生時代には稲作祭祀を基盤として広がり、古墳時…

源氏物語 各巻冒頭文 乙女

乙女(をとめ) 巻名 「乙女[少女](をとめ)」とは、五節の舞姫をさす歌語にてございます。ここでは、光源氏が筑紫の五節に贈られた御歌、「をとめごも神さびぬらし天つ袖ふるき世の友よはひ経ぬれば」、また、夕霧が惟光の娘なる五節に贈られた御歌、「日…

源氏物語 乙女 十六首

乙女[少女](をとめ) 十六首 かけきやは 川瀬の波も たちかへり 君が禊の 藤のやつれを 光源氏 ⇒ 朝顔の君(贈歌) 【意訳】 まことに思いも寄らぬことでございました。今日また禊の時が巡り来て、あなたさまのお召しの藤色の喪衣を拝することになろうとは…

源氏物語 各巻冒頭文 朝顔

朝顔(あさがほ) 巻名 本巻は、光源氏と朝顔の姫君との贈答歌――「見しをりのつゆわすられぬ朝顔の花のさかりは過ぎやしぬらむ」「秋はてて霧のまがきにむすぼほれあるかなきかにうつる朝顔」――を典拠としている。 本文 斎院は、御服にており居給ひにきかし…

源氏物語 朝顔  十三首

朝顔 十三首 人知れず 神の許しを 待ちし間に ここらつれなき 世を過ぐすかな 光源氏 ⇒ 朝顔の君(贈歌) 【意訳】 人知れず神の御許しを待ち侍るあひだ、久しく辛苦に満ちた日々を過ごしてまいりましたことにございます。 ※朝顔の君は父の薨去により賀茂の…

八条院 ― 平安王朝に不動産王国を築きし皇女の盛衰

八条院像(安楽寿院蔵) 八条院 ― 平安王朝に不動産王国を築きし皇女の盛衰 多紀理 一般に日本史の学びにおいて「荘園」という語を耳にすることが多うございます。荘園とは、田畑や山林を貴族や寺社が所有し、そこに生きる人々から年貢を受ける仕組みにほか…

「いざよふ月」の愛らしさ ― 不完全のかたちに見出す美

「いざよふ月」の愛らしさ ― 不完全のかたちに見出す美 多紀理 先日、友人が少し興奮した面持ちで、「三日目の月のことだけを三日月と言うのだそうですが、ご存じでした?」と語りかけてまいりました。仕事の帰り道に同僚へ「今宵は美しい三日月が出ておりま…

新古今和歌集 巻第十四 恋歌四 1269

新古今和歌集 巻第十四 恋歌四 1269 題知らず 西行法師 もの思ひてながむる ころの月の色に いかばかりなる あはれ添ふらん 新編日本古典文学全集「新古今和歌集」(訳者 峯村文人 小学館)の訳 題知らず 西行法師 物思いをして見入るこのごろの月の色に、どれ…

源氏物語 各巻冒頭文 薄雲

薄雲(うすぐも) 巻名 光源氏の藤壺哀悼の歌、「入日さす峰にたなびく薄雲はもの思ふ袖に色やまがへる」による。 本文 冬になりゆくまゝに、川づらの住まひいとゞ心ぼそさ増さりて、うはの空なるこゝちのみしつゝ明かし暮らすを、君も、「なほかくてはえ過…

源氏物語 薄雲 十首

薄雲 十首 雪深み 深山の道は 晴れずとも なほ文かよへ 跡絶えずして明石の君 ⇒ 乳母(贈歌) 【意訳】 雪が深く積もり、この奥山の道は閉ざされましょうが、都からのお便りだけは、どうか絶えずお届けくださいませ。 ※「文」と「踏み」の掛詞。「雪」と「晴…

新古今和歌集 巻第十四 恋歌四 1265

新古今和歌集 巻第十四 恋歌四 1265 題知らず 肥後 面影の忘れぬ 人によそへつつ 入るをぞ慕ふ 秋の夜の月 新編日本古典文学全集「新古今和歌集」(訳者 峯村文人 小学館)の訳 題知らず 肥後 面影の忘れられない人になぞらえなぞらえして、入っていくのを慕い…

ケンブリッジ大学ダウニング・コレッジ夏季講座における日本古典和歌の学びとその意義

Conversion to svg. Inkscape displays the file correctly, but Firefox misinterprets the bounding box for some of the blurred elements The Study and Significance of Classical Japanese Waka Poetry at the Summer Programme of Downing College, U…

小泉八雲『雪女』論 ― 異文化的想像力と日本的怪異の交錯

小泉八雲『雪女』論 ― 異文化的想像力と日本的怪異の交錯 多紀理 はじめに 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン、一八五〇–一九〇四)は、明治の世において、日本の怪談や民話を英語で世に伝えた文筆家として広く知られております。彼の著作『Kwaidan: Stories a…

新古今和歌集 巻第十一 恋歌一 1073

新古今和歌集 巻第十一 恋歌一 1073 百首歌奉りし時 摂政太政大臣 梶緒を絶え由良の 湊に寄る舟の たよりも知らぬ 沖つ潮風 新編日本古典文学全集「新古今和歌集」(訳者 峯村文人 小学館)の訳 百首の歌を差し上げた時 摂政太政大臣 梶の綱が切れ由良の湊に寄…