古典
勝さびに天照大御神の営田の阿を離ち、其の溝を埋み、また其の大嘗聞こし看す殿に屎まり散らす。故然為れども、天照大御神はとがめずて告りたまはく、「屎如すは酔ひて吐き散らすとこそ我がなせの命かく為つれ。また田の阿を離ち溝を埋むは、地をあたらしと…
秋の夜も名のみなりけりあふと言へばことぞともなく明けぬるものを 小野小町 (古今和歌集 巻第十三 恋歌三 635) 上村松園『小野小町図』 1935年 余談ですが、小野小町を世界三大美女と言い出したのは明治時代から。 おそらく当時の講談師や新聞記者など…
(故尓しておのもおのも天の安河を中に置きてうけふ時に、天照大御神まづ建速湏佐之男命の佩ける十拳の釼を乞ひ度し、三段に打ち折りて、ぬなとももゆらに、天の真名井に振り滌きて、さがみにかみて、吹き棄つる気吹の狭霧に成れる神の御名は、多紀理毗売命、…
故是に速湏佐之男命、言したまはく、「然あらば天照大御神に請しに罷らむ」とまをす。天に参上りたまふ時に、山川悉く動み国土皆震ひぬ。尓して天照大御神聞き驚きて詔りたまはく、「我がなせの命の上り来る由は、かならず善き心にあらじ。我が国を奪はむと…
此の時に伊耶那伎命いたく歓喜ばして詔りたまはく、「吾は子を生らし生らして、生らす終に、三の貴き子を得つ」とのりたまふ。其の御頸珠の玉の緒もゆらに取りゆらかして、天照大御神に賜ひて詔りたまはく、「汝が命は高天原を知らせ」と、事依さして賜ふ。…
是を以ち伊耶那伎大神詔りたまはく、「吾は伊那、仕許米仕許岐、穢き国に到りて在りけり。故吾は御身の禊為む」とのりたまひて、竺紫の日向の橘の小門の阿波岐原に到り坐して、禊き祓へたまふ。 是に左の御目を洗ひたまふ時に成りませる神の名は、天照大御神…
是に伊耶那岐命、見畏みて逃げ還ります時に、其の妹伊耶那美命言さく、 「吾に辱見せつ」とまをす。 よもつしこめを遣はし追はしむ。尓して伊耶那岐命、黒御縵を取り、投げ棄つるすなはち蒲子生る。是を摭ひ食む間に逃げ行でます。なほ追ふ。 また其の右の御…
是に其の妹伊耶那美命を相見むと欲ほし、黄泉国に追ひ往でます。 尓して殿の縢戸より出で向かへたまふ時に、伊耶那岐命語りて詔りたまはく、 「愛しき我がなに妹の命、吾と汝と作れる国、いまだ作り竟へず。故、還るべし」とのりたまふ。尓して伊耶那美命答…
次に火之夜芸速男神を生みたまふ。 またの名は火之炫毗古神と謂ひ、またの名は火之迦具土神と謂ふ。 此の子を生みたまひしに因りて、みほと炙かえて病み臥せり。 是に伊耶那岐命、御佩かせる十拳の釼を抜き、其の子迦具土神の頸を斬りたまふ。 youtu.be 古事…
さて、かぐや姫、かたちの世に似ずめでたきことを、帝聞こし召して、内侍中臣房子にのたまふ、「多くの人の身を徒らになしてあはざなるかぐや姫は、いかばかりの女ぞと、まかりて見て参れ」とのたまふ。房子、承りてまかれり。 「よきかたちにもあらず。いか…
是に其の妹伊耶那美命を問ひて曰りたまはく、 「汝が身はいかにか成れる」とのたまふ。 答へて白さく、 「吾が身は成り成りて、成り合はぬ処一処在り」とまをす。 尓して伊耶那岐命詔りたまはく、 「我が身は成り成りて、成り余れる処一処在り。故此の吾が身…
紅の深染めの衣を下に着ば人の見らくににほひ出でむかも 読人不知 (萬葉集 巻第十一 譬喩歌 2828) Photo:毎年7月に行われる「山形紅花祭り」(紅花は山形県、山形市の花です) くれなゐ (万葉表記 紅 呉藍 久礼奈為 ) 末摘花((うれつむはな)とも ベニバ…
今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。 野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。 名をば、讃岐造となむ言ひける。 その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。 あやしがりて寄りて見るに、筒の中光りたり。 それを見れば、三寸ばかりなる人、い…
是に天つ神諸の命以ち、伊耶那岐命伊耶那美命の二柱の神に詔りたまはく、 「是のただよへる国を修理め固め成せ」 とのりたまひ、天の沼矛を賜ひて、言依さし賜ふ。故二柱の神、天の浮橋に立たして、其の沼矛を指し下ろして画かせば、塩こをろこをろに画き鳴…
「天地初めて発くる時に、 髙天原に成りませる神の名は、天之御中主神。次に御産巣日神。次に髙神産巣日神。此の三柱の神は、みな独神と成り坐して、身を隠したまふ。」 「次に国稚く、浮ける脂の如くしてくらげなすただよへる時に、葦牙の如く萌え騰る物に…
住の江の松ほどひさになりぬれば葦田鶴の音になかぬ日はなし 兼覧王 (古今和歌集 巻第十五 恋歌五 779) 【古今和歌集(片桐洋一著、笠間文庫)の訳】 住之江の松はすっかり久しくなったが、 私もあの方を待つのが随分久しくなったので、 芦田鶴が声を上げて…
伊耶那岐命畏みて、逃げ還ります時 ・・・黄泉つ比良坂の坂本に到ります時、その坂本に在る桃子三個取らして、待ち撃てば、悉く坂返りつ。 爾して、伊耶那岐命、桃子に告らさく、 汝、吾を助けしが如く、葦原中国に有ら所る宇都志伎青人草の、苦しき瀬に落ち…
白玉か何ぞと人の問ひしとき露と答へて消なましものを 在原業平 (新古今和歌集 851) 白玉か何ぞと人の問ひしとき露と答へて消えなましものを (伊勢物語 六段 芥川) 歌詠み 多岐都 Ise Monogatari Emaki (Picture by Sumiyoshi Jyokei, words by Otagi Michit…
来むと言ふも来ぬ時あるを来じと言ふを来むとは待たじ来じと言ふものを 大伴坂上郎女 (萬葉集 第4巻 527) 当代随一の女流万葉歌人!大伴坂上郎女 【大宰府の偉人(出身:奈良市)】 『万葉集』を編纂した大伴家持の叔母にあたり、万葉集に84首もの歌を残した…
月前恋といふことを 月はただむかふばかりのながめかな心のうちのあらぬ思ひに祝子内親王(風雅集 983) 玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする 祝子内親王 (新古今和歌集 恋歌一 1034) (百人一首 89番) 祝子内親王 鎌倉時代後期~南北朝…
おしてる難波の菅のねもころに 君が聞こして年深く長くし言へばまそ鏡磨ぎし心を許してし その日の極み波のむたなびく玉藻のかにかくに心は持たず 大船の頼める時にちはやぶる 神や放くらむうつせみの人か障ふらむ通はしし 君も来まさず玉梓の使ひも見えずな…
極楽も地獄もさきは有明の月の心にかかる雲なし 上杉謙信 (辞世の句) 絵、上杉謙信の肖像画 上杉謙信(上杉景虎)は、戦国時代の越後国の大名。享禄3年(1530年)に生まれ、天正6年(1578年)に死没。 戦国時代の武将たちのなかでも屈指の戦上手と…
見てもまた逢ふ夜まれなる夢のうちにやがて紛るる我が身ともがな とむせかへりたまふさまも、さすがにいみじければ... 光源氏 (源氏物語 五帖 若紫) 源氏物語図 若紫(巻5)日本画 / 安土・桃山 / 大分県 狩野派 桃山時代/17世紀 紙本金地着色 縦36.2×横56.…
匂宮と浮舟、橘の小島の和歌を詠み交す 匂宮、雪の山道の宇治へ行く かの人の御けしきにも、いとど驚かれたまひければ、あさましうたばかりておはしましたり。京には、友待つばかり消え残りたる雪、山深く入るままに、やや降り埋みたり。 常よりもわりなきま…
貢物許されて国富めるを御覧じて 仁徳天皇御歌 高き屋に登りて見れば煙立つ民のかまどはにぎはひにけり (新古今和歌集 巻第七 賀歌 707) 『東錦昼夜競』より「仁徳天皇」(部分)1886年(明治19年)楊洲周延 画 国内最大の前方後円墳、仁徳天皇陵古墳=堺市 …
左衛門の内侍といふ人侍り。あやしう、すずろによからず思ひけるも、 え知り侍らぬ心憂きしりう事の、多う聞こえ侍りし。 内裏の上の、源氏の物語人に読ませ給ひつつ聞こしめしけるに、 「この人は日本紀をこそ読み給ふべけれ。まことに才あるべし」 と、の…
荒小田の去年の古跡の古蓬今は春べとひこばえにけり 曽禰好忠 (新古今和歌集 巻第一 春歌上 77) 題詞;朱雀天皇の御代、 大きな地震で大きな被害があった(938年4月15日、天慶地震)ことを 詠む 作者;曾禰好忠 去年(938年)、勢いが強く、荒々しい地震があり、…
石上布留野の小笹霜を経てひと夜ばかりに残る年かな 摂政太政大臣 (新古今和歌集 巻第六 冬歌 698) 横浜「除夜の汽笛」 横浜 中華街・みなとみらい ’24/旅行【1000円以上送料無料】価格: 1155 円楽天で詳細を見る NUROモバイル NUROモバイル ソニーネットワ…
願はくは花の下にて春死なむその如月の望月の頃 西行法師 (山家集 巻上 春 77) (続古今和歌集 巻第十七 雑歌集 1527) 紙本著色西行法師行状絵詞(第三巻) 百人一首86西行法師 西行法師図 橋本雅邦筆 明治25年(東京大学 駒場博物館蔵) JR桜木町駅すぐ近…
何事のおはしますをば知らねどもかたじけなさに涙こぼるゝ 西行法師 (西行法師歌集) 白洲正子は著書『西行』の中で、この歌が彼のものかどうかも疑わしいところもあるが、それでも彼の歌と信じられてきたのは、「いかにも彼らしい素直さと、うぶな心が現れて…