雲心月性...

慈愛する和歌を拙筆くずし字で紹介致します。

新古今和歌集  巻第十三  恋歌三  1167

新古今和歌集  巻第十三  恋歌三  1167

題知らず

実方朝臣

明けがたき二見の

浦に寄る波の

袖のみ濡れて

沖つ島人



新編日本古典文学全集「新古今和歌集」(訳者・峯村文人小学館)の訳


題知らず

実方朝臣

 夜の明けがたい二見の浦に寄る波のように、長い感じの夜を、格子(こうし)の開けがたいあなたの家でこぼした涙で、袖ばかりが濡れて、起きていた、沖の島人のような私です。

 

意訳


以下に意訳を記します。

 


題は掲げぬことといたします。

作者
藤原実方

 

 あの方が住まう二見が浦へと、逢瀬を願う心ひとつに赴きましたが――

 その御簾の奥、格子の向こうにお姿を求めることは叶わず、扉は閉ざされたままでございました。

 ただ寄せては返す波のように、私の袖ばかりが涙に濡れてゆくのです。

 まるで、沖合に取り残された島人のように、お部屋の前に独り佇み、夜を通して眠ることも叶わず、ただ、明け方を迎えるばかりでございました。

 

解説


 藤原実方(ふじわらのさねかた):生年は定かではありませんが、長徳四年(998)十二月十三日にご逝去なさったとされております。享年四十歳前後と推定されます。

 

 中古三十六歌仙の一人に数えられ、花山天皇および一条天皇にお仕えいたしました。長徳元年(995)正月、突如として陸奥国へと左遷されております(一条天皇の御代にあたります)。

 

 多くの女性と親しく交際していたと伝えられ、『源氏物語』に登場する光源氏のモデルの一人とも考えられております。

 

脚注


『実方集』の詞書には、「格子のつらに一夜ゐ明して、朝(あした)に、同じ人に」と記されております。

また、第三・第四句は「寄る波に袖のみ濡れし」と表記されております。

 

 

 


 

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