新古今和歌集. 巻第十五. 恋歌五 1422
久しくなりにける人のもとに
謙徳公
長き世の尽きぬ
嘆きの絶えざれば
なにに命を
かへて忘れん

新編日本古典文学全集「新古今和歌集」の訳
逢わないで久しくなってしまった人のもとに
謙徳公
死後までの長い世の、あなたに逢えなくて尽きない嘆きが絶えないとしたならば、
何に命を替えて、嘆きを忘れたらよいのでしょうか。
意訳
題詞
長きあいだ心を通わせ、ともに歳月を重ねてまいりました、なじみ深きお方がご逝去あそばされましたので、哀悼のまことをこめて、一首を詠み奉ります。
作者
謙徳公(藤原伊尹)
あなたさまのいらっしゃらぬこの世を生きておりますと、わたくしの残されました余生の時は、ことのほか長く感じられてなりません。
ため息を重ねながら、嘆き悲しむ思いは、ひとときも尽きることがございません。
わたくしはこれより後、何を頼みといたしまして、あなたさまの御面影をお忘れ申し上げることができましょうか。
解説
藤原伊尹(九二四年―九七二年十一月一日、享年四十九)は、朱雀・村上・冷泉・円融の四代にわたり朝廷に仕え、父に藤原師輔をもち、天暦・天延の政界において重きをなした公卿でございます。
天禄元年五月二十日より、天延二年十月二十三日に至るまで摂政の任にあり、妹・藤原安子は村上天皇の中宮として、憲平親王(後の冷泉天皇)、為平親王、守平親王(後の円融天皇)をお生み申し上げました。
また伊尹は、冷泉天皇に娘・懐子を入内させ、師貞親王(後の花山天皇)がお生まれになっております。
『日本古典文学全集』脚注
『一条摂政御集』には、初句を「長き世に」、結句を「かけてわすれん」とする異伝が見えております。
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