古今和歌集 巻第一 春歌上 68
亭子院歌合のときよめる
伊勢
見る人もなき
山里の桜花
ほかの散りなむ
のちぞ咲かまし

日本古典文学全集(小学館)の訳
亭子院歌合のときに詠んだ歌
伊勢
こんな寂しいところに咲いて、誰も見てくれ手がない山里の桜花よ。
いっそ、ほかの花がみんな散り尽くした後から咲けば、少しはましなのがねえ。
意訳
作者:伊勢
遥かなる山里では、
桜が咲いても、お訪ねくださる方もなく、ましてや、逢いに来てくださる方もいらっしゃいません。
せめて桜が、時を心得て、ほかの花々が皆散り終えた後に、あなた様のおいでになる山里に咲いてくれましたなら、
「花見」と称して、人々も足を運んでくださったことでしょうに——。
解説
亭子院歌合(ていじいんのうたあわせ)は、延喜13年(913年)3月13日、宇多法皇が御所としていた亭子院において催された和歌の会でございます。
本歌は、古今和歌集の編纂完了(912年頃)以降に詠まれた歌と考えられます。そのため、伊勢が、前に詠まれた凡河内躬恒の歌を踏まえて応じた一首であると推察されます。実際、両者の歌が連続して記されていることからも、その意図が窺われます。
なお、この亭子院歌合には、伊勢、凡河内躬恒の両名とも出席しており、当代を代表する歌人たちの交流がうかがわれます。
伊勢は、宇多天皇の中宮・温子様にお仕えしたのち、宇多天皇の深いご寵愛を受け、お子をもうけた女性でもあります。そのような背景もまた、彼女の歌に一層の趣を添えているように思われます。
- 価格: 1276 円
- 楽天で詳細を見る
- 価格: 9900 円
- 楽天で詳細を見る
|
|
PR