2023-01-01から1年間の記事一覧
秋立日よめる 秋きぬとめにはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる 藤原敏行朝臣 (古今和歌集 巻第四 秋歌上 169) (?-901?) 在原業平の妻の妹と結婚。三十六歌仙の一人で、能書家。 Fujiwara-no-Toshiyuki-ason (?-c. 901 C.E.)Married the sister o…
あさましきもの刺櫛(さしぐし)すりてみがくほどに、物に突き障へて(つきさえて)折りたるここち。車のうちかへりたる。さるおほのかなる物は、所狭く(ところせく)やあらむと思ひしに、ただ夢の心地して、あさましうあへなし。人のために恥づかしうあし…
(匂宮)穂に出でぬ物思ふらし篠薄招く袂の露繁くして なつかしきほどの御衣どもに、直衣ばかり着たまひて、琵琶を弾きゐたまへり。黄鐘調の掻き合はせを、いとあはれに弾きなしたまへば、女君も心に入りたまへることにて、もの怨じもえしはてたまはず、小さ…
〔…〕今宵はうたて情なくのみあたり給ひて、薄き衣はいたくほころびてけるにや、残る方なくなりゆくにも、世にありあけの名さへうらめしき心地して心よりほかに解けぬる下紐(ひぼ)のいかなるふしにうき名流さんなど思ひつづけしも、心はなほありけると、わ…
昔、もの言ひける女に、年ごろありて、 いにしへのしづのをだまき繰りかへし 昔を今になすよしもがな と言へりけれど、何とも思はずやありけむ。 (伊勢物語より) 伊勢物語図色紙(香雪本) 中之島香雪美術館 小説伊勢物語 業平 (日本経済新聞出版) 作者:髙樹…
かぐや姫に、「はや、かの御使ひに対面し給へ」と言へば、かぐや姫、「よきかたちにもあらず、いかでか見ゆべき」と言へば、「うたてものたまふかな。帝の御使ひをばいかでかおろかにせむ」と言へば、かぐや姫答ふるやう、「帝の召してのたまはむこと、かし…
昔、男、初冠(うひかうぶり)して、平城(なら)の京、春日の里に、しるよしして、狩にいにけり。その里に、いとなまめいたる女はらから住みにけり。この男かいまみてけり。おもほえずふるさとにいとはしたなくてありければ、心地まどひにけり。男の着たり…
夜もすがらもの思ふ頃は明けやらでねやのひまさへつれなかりけり俊恵法師 (千載集 恋二 766) 俊恵法師 坊主(1113-?) 父は源俊頼。東大寺の僧で、平安末期の代表歌人として知られる。 鴨長明は弟子。 Shun-e Hoshi (1113-? C.E.) Son of Minamoto-no-Toshiyor…
風そよぐ楢の小川の夕暮は御禊ぞ夏のしるしなりける 従二位家隆 (新勅撰和歌集 巻第三 夏 192) 百人一首 98番 風そよぐ ならの小川の 夕ぐれは みそぎぞ夏の しるしなりける 従二位家隆 No.98 To Nara's brook comes Evening, and the rustling winds Stir t…
しづやかなるを本として 、さすがに心うつくしう 、人をも消たず身をもやむごとなく 、心にくくもてなしそへたまへること (源氏物語より) 源氏物語絵色紙帖 若菜上 詞菊亭季宣 京都国立博物館 https://colbase.nich.go.jp/collection_items/kyohaku/A%E7%94%…
「翁、年七十に余りぬ。今日とも明日とも知らず。この世の人は、男は女にあふことをす、女は男にあふことをす。その後なむ門広くもなり侍る。いかでか、さることなくてはおはせむ」 かぐや姫の言はく、「なんでふさることかし侍らむ」と言へば…… (竹取物語よ…
世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる 山上憶良 (萬葉集 巻第十 2632) 「鹿下絵新古今集和歌巻断簡(西行法師)」(画)俵屋宗達(書)本阿弥光悦(山種美術館蔵) https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/215347 新版 万葉集 現代語訳付…
宮より「雨のつれづれはいかに」とて おほかたにさみだるるとや思ふらむ君恋ひわたる今日のながめを とあれば、折を過ぐしたまはぬををかしと思ふ。あはれなる折しもと思ひて、 しのぶらむものとも知らでおのがただ身を知る雨と思ひけるかな と書きて、紙の…
桜散る木の下風は寒からで空に知られぬ雪ぞふりける紀貫之(拾遺和歌集 64) 中村素堂先生の書 中谷春径先生所蔵 多紀理 稚筆 紀貫之は『古今和歌集』の選者のひとりで、仮名日記文学の傑作『土佐日記』の作者。『藤房本(ふじふさぼん)三十六歌仙絵(模本)…