(匂宮)穂に出でぬ物思ふらし篠薄招く袂の露繁くして
なつかしきほどの御衣どもに、直衣ばかり着たまひて、琵琶を弾きゐたまへり。黄鐘調の掻き合はせを、いとあはれに弾きなしたまへば、女君も心に入りたまへることにて、もの怨じもえしはてたまはず、小さき御几帳のつまより、脇息に寄りかかりてほのかにさし出でたまへる、いと見まほしくらうたげなり。
(中君)「秋果つる野辺の景色も篠薄ほのめく風につけてこそ知れ
わが身一つの」とて涙ぐまるるが、さすがに恥づかしければ、扇を紛らはしておはす
る心の中も、らうたく推しはからるれど、かかるにこそ人もえ思ひ放たざらめ、と疑はしき方ただならで恨めしきなめり。
(源氏物語 宿木 三段より)
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