あらざらむこの世のほかの思ひ出にいまひとたびの逢ふこともがな
和泉弐部
Soon I cease to be;-- One fond memory I would keep When beyond this world. Is there, then, no way for me Just once more to meet with thee?
めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬ間に雲隠れにし夜半の月影
夜半の月かな
Meeting in the way--, While I can not clearly know If 'tis friend or not;-- Lo! the midnight moon, ah me! In a cloud has disappeared.
和泉式部といふ人こそ、おもしろう書きかはしける。されど、和泉はけしからぬかたこそあれ。うちとけて文はしり書きたるに、そのかたの才ある人、はかない言葉の、にほひも見えはべるめり。歌は、いとをかしきこと。ものおぼえ、うたのことわり、まことの歌詠みざまにこそはべらざめれ、口にまかせたることどもに、かならずをかしき一ふしの、目にとまる詠み添へ侍り。
それだに、人の詠みたらむ歌、難じことわりゐたらむは、いでやさまで心は得じ。口にいと歌の詠まるるなめりとぞ、見えたるすぢにははべるかし。恥づかしげの歌詠みやとはおぼえはべらず。
(紫式部日記)より
意訳
……で、和泉式部についてなんですけどね。彼女とは、前に文通していたことがありました。でも、あの子はちょっと感心しないところがあるのです。
ちょっと気を許すと筆が緩むのか、文章の端々に「その方面」の才能が見え隠れするというか……ねぇ?(遠回しなモテ自慢というか、いやらしさが鼻につきます。解るでしょう?)
で、和歌なんだけど。古典の知識や表現の技巧は正直中途半端。あれでいっぱしの歌人を気取るなんて、逆に可哀想(調子に乗るな、って誰か言ってやればいいのに)。
まぁ、まるでダメダメかと言えばそれほどでもないけど、うん。いくつか詠ませてみれば一首くらいはマシなのがあるから、まぁね。悪くはないんじゃないでしょうか。
とは言うものの、他人様が詠んだ和歌にケチをつけたり論評したりできる立場ではないでしょう(なのに調子に乗って、まったくあの子は)。
口を開けば和歌が詠まれるような才気あふれるキャラで通っているようですが、「恥ずかしげの歌詠み(※)」ってレベルには到底及びませんね。
(※)あまりに素晴らしい和歌を詠むので、こっちが気恥ずかしくなってしまうほどの歌人を指す慣用句。
所感
……ん〜、褒めているのか貶しているのか。結構ボロッカスですね。原文はそこまでではないものの、それこそ紫式部には「その方面」の才能があるのか、行間から色々とにじみ出ていますね。
文中「おもしろう書きかはしける(面白く書き交わした)」とありますが、この面白いという文言を、ポジティブな意味にばかり解釈できないのはきっと私だけではないはずです。
「あらあら……この程度の和歌をドヤ顔で詠み散らして……まったく可愛らしいこと」
「ふふ、本当に面白い子ですね」
和泉式部からの手紙に、紫式部がどんな顔で返書をしたためたのか、想像すると背筋がゾッとしますね。(*◡̈)
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